目次為替リスクとは?企業が直面する為替リスク例為替ヘッジ立場による為替ヘッジの展望 為替リスクとは? 外貨為替相場の変動によって、損失が発生 […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は11月11日週に4.09円と、前週の3.43円から拡大した。週足では、反発。共和党トランプ候補が米大統領選を制した上、共和党が米上下院で多数派を獲得することが確実となり、ドル高・円安が加速した。11月14日のNY引け前には、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利下げに急がない姿勢を打ち出し、翌15日に一時156.75円と7月下旬以来の高値をつけた。ただ、その後は本邦当局の隠密介入(公表せずに秘密裏に介入を行うこと、別名ステルス介入)観測が浮上、一時は154円を割り込んだ。
- 米金利上昇・ドル高・米株高の「トランプ・トレード」に、陰りがみえている。足元の堅調な米経済指標を受け、12月の追加利下げが後退するだけでなく、トランプ2.0を控え、閣僚に指名された人物の問題がクローズアップされ、米上院での承認指名が困難となる見通しが浮上したためだ。トランプ氏自身、米上院共和党トップをめぐる投票前に休会任命を支持する人物を選好する構えをみせており、必ずしも指名承認が必要とも限らない。ただし、指名をめぐる不確実性が意識されれば、米金利の上昇を始め“トランプ・トレード”が一服する場合もありうる。また、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)とインド系起業家のビベク・ラマスワミ氏が率いる政府効率化省(DOGE)が、大規模な連邦歳出削減を助言する可能性もあり得よう。
- トランプ氏は、矢継ぎ早に閣僚候補を指名してきた一方、市場は米財務長官についてはまだ動いていない。足元、トランプ陣営の政権移行チーム共同委員長と経済アドバイザーを務めるカンター・フィッツジェラルド会長兼CEO、ハワード・ラトニック氏、同じく経済アドバイザーのキー・スクエア・グループ創業者兼CEO、スコット・ベセント氏が有力視されている。トランプ氏と言えば、4月と7月にドル高・円安是正を望む姿勢を強調。しかし、ベセント氏は10月、トランプ氏は米経済が発展する局面でドル高を容認すると言及しており、指名されればその姿勢が変化するか注目される。もっとも、足元ではこの2人で内紛が勃発、嫌気したトランプ氏が別の候補を立てる可能性もあるという。
- “トランプ・トレード”でドル円が一時156円を回復するなか、日銀が12月に追加利上げを行う可能性が取り沙汰され始めた。植田総裁は10月の日銀金融政策決定会合で「時間的余裕」を撤回し、10月企業物価指数や輸入物価指数、9月実質賃金や共通事業所ベースの所定内給与(一般)を踏まえれば、日銀の見通しは「オントラック」と考えられる。植田総裁は11月18日と21日に発言を予定するが、12月追加利上げの地ならしを行うか、注目される。
- 今週は11月18日に9月機械受注、19日に米10月住宅着工件数、20日に日本10月貿易統計、英10月消費者物価指数(CPI)、21日に米11月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米新規失業保険申請件数、米10月中古住宅販売件数、22日に日本10月全国消費者物価指数、米11月総合PMI速報値(製造業、サービス業含む)、米11月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。その他、11月18日には植田総裁やラガルドECB総裁、シカゴ連銀総裁、19日もシカゴ連銀総裁、20日にはクックFRB理事とボウマンFRB理事、21日には再び植田日銀総裁が登場するほか、バーFRB副議長とカンザスシティ連銀総裁、22日にはボウマンFRB理事が発言を予定する。
- ドル円はテクニカル的に、非常に強い地合いを維持。21日移動平均線が200日移動平均線を突破しゴールデン・クロスを形成しただけでなく、50日移動平均線が90日移動平均線を上回りつつある。また、ローソク足はボリンジャー・バンドの2σを上回り、21日移動平均線も超えて推移。一目均衡表の三役好転を保つ。さらに、11月12日以降は7月高値と9月安値の61.8戻しがある153.41円を完全に抜けて推移した。RSIが14日移動平均線を下回りデッドクロスを形成したとはいえ、割高の節目である70以下であることも、上値余地を示唆する。
- 投機筋の円のネット・ポジションの動向は11月12日週に6万4,902枚と、前週の4万4,167枚を上回り、3週連続でショートとなった。
- テクニカル的に非常に強い地合いとはいえ、前述したように11月18日週は植田日銀総裁の発言を2回も予定する。また、11月15日の急落をめぐり、隠密介入の観測も根強い。以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の157円、下値は21日移動平均線が近い152.90円と見込む。
1.為替相場の振り返り=ドル円、レッドウェーブ確定で156円乗せ後に一時154円割れへ急落
【11月11日~15日のドル円レンジ: 152.67~156.75円】
ドル円の変動幅は11月11日週に4.09円と、前週の3.43円から拡大した。週足では、反発。11日はベテランズ・デー(退役軍人の日)で米債市場が休場ながら週初から上昇気流に乗り、トランプ氏が米通商代表部(USTR)代表に第1次トランプ政権で対中関税強化などを主導したライトハイザー氏に復帰を打診したとの報道もあり、買いでスタートした。共和党が上院だけでなく下院で過半数を維持することが確実となったことも、トランプ2.0でインフレ圧力と金利上昇につながる減税策や関税強化、大量の移民強制送還が実現するリスクを意識させた。13日には、米10月消費者物価指数(CPI)の上振れが意識されるなか市場予想と一致したため下落する場面がみられたが、ダラス連銀総裁が追加利下げに慎重となるべきとの見方を示し、買戻しにつながった。
14日には、米10年債利回りが7月以来の4.48%台に乗せる過程で、ロンドン時間に156円台と7月下旬以来の大台を回復。米新規失業保険申請件数が減少し、米10月生産者物価指数が前年比で市場予想を上回った場面で伸び悩んだが、パウエルFRB議長が追加利下げに急がない姿勢に言及すると、一時156円半ばを目指す展開をみせた。15日には、東京時間に一時156.75円まで上値を拡大。加藤財務相が「為替の行き過ぎた動きには適切な対応とっていく」と発言したものの反応薄だったが、東京時間の15時過ぎに急落。一部では、本邦当局の隠密介入の思惑が飛び交った。米10月小売売上高や米11月NY連銀製造業景況指数などが市場予想を上回り一旦155円前半で下げ止まるかにみえたが、その後、下落を再開させた。NY引け前には154円を割り込み、一時153.80円台まで下落しつつ、154円前半へ切り返し週を終えた。
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