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  • Weekly Report(11/5):「ドル円は米大統領選とFOMC で波乱含みも、セル・ザ・ファクトに注意」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は10月28日週に2.10円と、前週の4.10円から縮小した。週足では、5週続伸。ドル円は衆議院総選挙で自民と公明の与党大敗とトランプ・トレードの流れが続き、28日に一時153.88円と7月末以来の高値をつけた。しかし、以降は米重要指標を控え伸び悩み、31日には、日銀金融政策決定会合後の植田総裁の会見で、政策変更をめぐる「時間的余裕」を撤回したため、一時151.83円まで下落。11月1日には、米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を大幅に下回る前月比1.2万人増だったため、一時151.79円まで週の安値を更新も、その後は米10月ISM製造業景気指数の仕入れ価格の上振れを受け153円付近で取引を終えた。
    • 日銀金融政策決定会合では、市場予想通り政策金利を据え置いた。展望レポートでは、物価リスクについて「25年度に上振れリスクの方が大きい」とするなど、追加利上げの道筋を確保。加えて、植田日銀総裁は、「時間的余裕」の文言について「今後は不要」と明言した。植田総裁は、米経済のダウンサイド・リスクとそれに伴う金融資本市場の急変動のリスクが低減したためと説明したが、ドル円が一時153円に乗せるなど為替に配慮した側面を意識すべきだろう。筆者は年明け1月の追加利上げを予想するが、ドル円次第では次回12月が視野に入る。
    • 11月5日に米大統領選の投票日、直後の6~7日には米連邦公開市場委員会(FOMC)を予定する。結果が判明していない可能性があるなか、Fedは市場予想通り0.25%の追加利上げを決定する見通しだ。
    • 米大統領選の結果次第では、ドル円は乱高下しうる。足元のトランプ・トレードに従えば、インフレ再燃と米連邦政府債務拡大懸念から、共和党のトランプ候補が勝利すれば短期的にドル高に振れそうだ。しかし、1期目の政策の進め方を踏まえれば、ドル高・円安是正の圧力をかけるシナリオも想定され、ドル安・円高の方向へ収斂されていくのではないか。ハリス氏が勝利した場合は、短期的にドル安となりうるが、2026年の中間選挙や2028年の米大統領選を控え、学生ローン債務免除など米議会を通さないバラマキを行う可能性があり、そうなればドル高・円安につながりうる。
    • 今週は11月5日に豪準備銀行の政策発表のほか、米大統領選並びに米議会選の投票日を迎え、米10月ISM非製造業景況指数を予定する。その他、6日は米10月総合PMI確報値、7日は中国10月貿易収支、日本9月毎月勤労統計調査、イングランド銀行の政策発表、米Q3単位労働コスト・速報値、米新規失業保険申請件数、FOMCの政策発表が控える。8日は、日本9月全世帯家計調査・消費支出と、米11月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が発表される。
    • ドル円はテクニカル的に、強い地合いを維持。21日移動平均線が90日移動平均線を突破し、ゴールデン・クロスが形成された。また、ローソク足は200日移動平均線を上回って推移し、一目均衡表の三役好転を保つ。一方で、上値は7月高値と9月安値の半値戻しがある153.41円を終値で抜けきれていない。引き続き、RSIが割高の節目となる70超えでは、調整が入る雲行きだ。
    •  投機筋の円のネット・ポジションの動向は10月29日週に2万4,817枚のショートと、前週の1万2,771枚とのロングから反転し、12週ぶりにショートに転じた。さらにショートが積み上がる場合は、これまで以上に円安が進むリスクをはらみそうだ。
    • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目がある155.00円、下値は21日移動平均線と7月高値と9月安値の半値戻しが近い150.70円と見込む。

    ドル円の変動幅は10月28日週に2.10円と、前週の4.10円から縮小した。週足では、5週続伸。ドル円は衆議院総選挙で自民と公明の与党が過半数割れを迎えた衝撃が続いたほか、米大統領選で共和党のトランプ氏が優勢との見方から買いの流れが続き、28日に一時153.88円と7月末以来の高値をつけた。しかし、以降は米重要指標を控え伸び悩み、29日に発表の米9月雇用動態調査(JOLTS)のうち、求人件数が減少し過去分が下方修正され153円割れへ押し返され、30日も米10月ADP全国雇用者数が強含みでも米Q3実質GDP成長率・速報値が市場予想以下にとどまったため、上値をトライできなかった。

    31日には、日銀金融政策決定会合で政策据え置きに加え、展望レポートでコアCPI見通しが前回から下方修正されたところ一時153.50円まで上昇も、その後はタカ派的な文言を意識し153円割れを迎えた。植田総裁が会見で、政策変更につき「時間的余裕」を使用せず、質問への回答で米経済弱含みを受けた「米経済のダウンサイド・リスク」を見極めるための時間的余裕との意味で、足元は「不要」と発言したため、152円割れを試しにかかった。会見後まもなく、一時151.83円まで下落。11月1日には、米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を大幅に下回る前月比1.2万人増だったため、一時151.73円まで週の安値を更新も、米10月ISM製造業景況指数の仕入れ価格が大幅上昇したこともあって、153円付近へ切り返しNY時間を終えた。

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