<テクニカル分析判断> ●短期:上昇トレンドが本格化する中、短期では過熱域に突入も「上昇余地は依然残存」 ●中期:上昇の本格化に伴い過 […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は3月25日週に0.95円と、その前の週の2.96円から縮小した。週間ベースでは、わずかに3週ぶりに反落。マイナス金利など大規模緩和解除後、円の「セル・ザ・ファクト(事実で売る)」展開の流れが続いた。また、Fed高官のタカ派的な発言も材料視。3月27日に一時151.97円と1990年7月以来、約34年ぶりの高値をつけたタイミングで、財務省・金融庁・日銀が3者会合を開催すると為替介入警戒が強まる場面も、下落は151.02円まで。以降は、151円前半でのもみ合いに終始した。
- 前週、ウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事を始め、利下げに慎重な発言が確認され、3回利下げを主張したのはシカゴ連銀総裁のみ。足元、一部の市場関係の間では1970~80年代の高インフレ時と足元の消費者物価指数(CPI)動向が似通っており、インフレが再燃し「いつか来た道」をたどるリスクが警戒されている。
- WTI原油先物が80ドルを超え2023年11月以来の高値をつけるなか、イエレン財務長官は4月訪中を控え、中国の過剰生産を問題視した。中国の製造業活動の回復を受けWTI原油先物を始めコモディティ価格や中間財の値上がりを通じ、米インフレ率が再び上向くリスクを踏まえ、中国側に釘を刺したとみられる。イエレン氏は2023年12月以降、インフレ鈍化と金利低下に一貫して言及していただけに、今後、このスタンスに変化が出るか、米金利とドル円の動向を占う上で注意が必要だ。
- 政府・日銀の為替介入が警戒されるなか、国際通貨基金(IMF)は介入を認める条件として、①市場が深刻な機能不全に陥る、②金融安定のリスクが高まる、③予想物価が制御不能になる――の3つを掲げる。2022年9~10月当時は、FRBが4回連続の0.75%利上げを行う過程にあり、ドル円の年初来の上昇率は25%以上を超えていた。
- 足元、日銀はマイナス金利を含め大規模緩和策を解除しており、円が一段安となる状況は正当化できないように見える。ただ、長期国債の買入規模の継続や金融緩和的な環境を維持する構えを表明するなど、円売り要因を抱えることも事実。まずは長期金利の上昇容認が円安是正として意識されるが、そうなると日本株安につながりかねない。4月28日に衆院補選を控えるなか、岸田政権が日本株安と円安による購買力低下のどちらを選ぶか、その決断で円安許容姿勢を試されそうだ。
- 今週は4月1日に日銀短観、米3月ISM製造業景況指数、2日に米2月雇用動態調査(求人件数含む)、3日にユーロ圏3月消費者物価指数・速報値のほか米3月ISM製造業景況指数、米3月ADP全国雇用者数、5日に米3月雇用統計を控え、日米欧で重要指標が目白押しだ。本邦当局による介入が警戒されるなか、米3月雇用統計が152円を突破するトリガーとなるか、あるいは6月利下げシナリオをサポートするかで、ドル円の運命が分かれそうだ。今週のドル円の上値は152.50円、下値は21日移動平均線がある149.80円を見込む。
1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、1990年7月以来の高値を付けるも152円手前で上げ渋り
【3月25日~29日のドル円レンジ:151.02~151.97円】
(前週の総括)
ドル円の変動幅は3月25日週に0.95円と、その前の週の2.96円から縮小した。週間ベースでは、わずかに3週ぶりに反落。マイナス金利など大規模緩和解除後、円の「セル・ザ・ファクト(事実で売る)」展開の流れが続いた。神田財務官が3月25日、円安の進行を受け「明らかに投機」と言及、円買い介入について「常に準備はできている」と述べた。また、植田日銀総裁が、衆院財務金融委員会で金融政策は為替相場を直接コントロールする対象にないとしつつ、「為替は経済・物価に重要な影響を及ぼす一つの要因。政府と緊密に連携しつつ、引き続き為替市場の動向や、その経済物価への影響を十分注視していきたい」と述べたが、影響は限定的だった。
3月27日の東京時間には、2022年10月高値の151.94円を抜け、一時151.97円と1990年7月以来、約34年ぶりの高値を更新。神田財務官が財務省内で会見し、為替について声明を出す予定はなく、財務省・金融庁・日銀による3者会合も開催しないと発言したものの、一転して午後6時15分から3者会合を開催すると報じられると、151.80円台から151.02円まで急落した。神田財務官が改めてあらゆる手段排除せず対応」、「2週間にドル円で4%はなだらかなものとは到底言えない」と発言したほか、鈴木財務相も「断固たる措置をとっていきたい」と言及。介入も辞さない構えを強調したため、152円乗せは回避された半面、151円を割り込むことはなかった。
以降、 ウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事が、最近のインフレ統計には「失望を感じる」と述べ、利下げに踏み切る前に「少なくとも数カ月分の良い内容のインフレデータ」を確認したいと述べたほか、米新規失業保険申請件数や米2023年Q4実質GDP成長率・確報値を上方修正したため、ドル円の下落は限定的に。29日には米株・米債市場がグッドフライデーを受け休場のところ、米2月コアPCE価格指数が市場予想通りだったほか、パウエルFRB議長が利下げ開始の前にインフレ低下の確信を持ちたいとの姿勢を繰り返しサプライズに乏しかったため、151円前半を中心としたもみ合いに終始した。
チャート:ドル円の2月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)
(出所:TradingView)
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