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  • Weekly Report(1/29):「ドル円、1月FOMCと米1月雇用統計次第で再び147円割れ試すか」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は3月4日週に4.09円と、その前の週の1.64円から大幅に拡大した。週間ベースでは、小幅ながら4週ぶりに反落。1月23日は日銀金融政策決定会合と植田総裁の発言を受け乱高下し、一時147円割れを迎えつつ、NY時間では148円台を回復した。しかし、翌24日には一時146.65円と約1週間ぶりの水準まで下落。以降は、米1月製造業PMI・速報値の分岐点回復を始め、市場予想を上回った米2023年10~12月期実質GDP成長率・速報値、米12月個人消費支出の強含みを受けて、ドル円は148円前半まで買い戻された。米12月コアPCE価格指数が2021年3月以来の3%割れを迎えたが、米10年債利回りが4%台を維持するなか、影響は限定的だった。
    • 1月30~31日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、米メディアの観測報道は3月利下げ余地を残すとの内容が優勢。大本命のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番記者、ニック・ティミラオス氏は、インフレ鈍化による実質金利の上昇が米経済を押し下げる懸念を踏まえ、3月以降の利下げに備えると報じた。特に、米景気が急激に悪化する場合は米労働市場に打撃を与えるとし、足元で既に米2023年11月採用率はコロナ禍を除き、2014年8月以来の水準に低下したと指摘する。加えて、利下げのピッチが急速となる可能性も点灯させた。こうした報道通りの展開となれば、ドル円を押し下げよう。
    • 1月22~23日開催の日銀金融政策決定会合では、声明文をほぼ変更しなかった半面、展望レポートで2025年度の物価見通しを小幅修正させた。会合後の記者会見で植田総裁が出口への「確度が高い」と述べたため、一旦はドル円の下落につながったが、マイナス金利解除後も緩和的な環境を維持するとの発言もあって、結局は148円台へ戻した。ドル円の方向性を決定づけるのは、やはりFedの金融政策と考えられる。
    • 今週は1月30日に米12月雇用動態調査(求人件数、採用者数など)、31日にFOMCの結果発表、2月1日に米1月ISM製造業景況指数、2日に米1月雇用統計を予定する。ドル円は、テクニカル的に三役好転を維持するなど地合いは強いが、1月FOMCがハト派となった場合や、米12月雇用動態調査や米1月雇用統計など労働指標の減速を受け、下振れのシナリオも想定される。今週はテクニカルより、こうしたイベント・リスクを重視すべき局面と捉えられよう。もちろん、1月FOMCが想定よりハト派でなければ、ドル円が上向く場合も想定される。
    • 投機筋による円のネット・ショートは1月23日週に7万645枚と、前週の5万6,560枚から拡大した。引き続きポジションは軽いものの、円ショートが巻き戻される余地ができたようにも見える。
    • 今週のドル円の上値は2023年11月戻り高値がある149.70円、下値は21日移動平均線と50日移動平均線が重なる146.60円と予想する。

    1.前週の為替相場の振り返り=ドル円、約1週間ぶりの安値後に米指標を受け148円台へ戻す 

    【1月22~26日のドル円レンジ:146.65~148.70円】

    (前週の総括)

     ドル円の変動幅は1月22日週に2.04円と、その前の週の3.96円から縮小した。週間ベースでは、小幅ながら4週ぶりに反落。1月23日の日銀金融政策決定会合では、声明文が緩和的な文言を維持した一方で、展望レポートで2025年物価見通しが小幅に上方修正されたため、乱高下した。植田総裁が「出口への確度が強まった」と発言すると、一時146.97円まで本日安値を更新しつつも、NY時間には米金利の上昇もあって148円後半へ戻した。

     一転して24日、NY時間にドル円は一時146.65円と約1週間ぶりの水準へ下落。しかし、米1月製造業PMI・速報値が分岐点の50を回復したほか、25日には米2023年10~12月期実質GDP成長率・速報値が前期比年率3.3%と市場予想の2%を大きく上回り、買い戻されていった。26日には、米12月PCE価格指数のコアが前年同月比で2021年3月以来の3%割れを迎えたものの、個人消費の力強さや米10年債利回りが4%台を維持したこともあって、ドル円の買い戻しを促し、148円前半で週を終えた。

    チャート:ドル円の2023年11月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸) 

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    (出所:TradingView)

    2.為替見通し=ドル円、1月FOMCと米1月雇用統計次第で再び147円割れ試すか

    【1月29日~2月2日の為替予想レンジ:146.40~149.70円】

    ―FF先物市場、年内の利下げ回数予想は再び6回が優勢に

     1月26日時点のFF先物市場では、31920日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ織り込み度は46.2と、1月12日の米12月生産者物価指数(CPI)後の3月利下げ織り込み度の76.9%から急低下したままで、5月利下げ開始の予想が50.9%と引き続きわずかながら優勢だ。前回のレポートで指摘したように、ウォラーFRB理事を始めとしたFed高官による早期利下げ期待けん制に加え、米23年Q4実質GDP成長率・速報値に代表される堅調な米経済指標が3月FOMCの利下げ期待の巻き戻しにつながった。

    チャート:3月利下げ織り込み度は、1月26日時点で46.2%

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     一方で、年内の利下げ回数予想は1月19日時点の5回から、再び6回に傾いている。これは、米12月コアPCE価格指数が前年同月比2.9%と、2021年3月以来の3%割れを迎えたことが一因だろう。

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