<テクニカル分析判断> ●短期:根強い上昇圧力の中でも、短期では「息切れ/ピークアウト接近」の兆候が窺える ●中期:ピークアウトか続伸 […]
(引用:https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/RDD7JW3X3VPI3FPZR5TF5UFEK4-2023-11-01/)
最初に知っておくべきこと
FRBとは?
米国の中央銀行制度はFEDと呼ばれ、全米12地区の連邦準備銀行及び連邦公開市場委員会(FOMC)により構成されます。連邦準備委員会(The Federal Reserve Board:FRB)はその最高機関であり、7名の理事(内、議長と副議長が各1名)がそのメンバーです。この7名の理事に5名の連銀総裁を加えた12名によるFOMCで金融政策が決定されます。
中央銀行とは?
中央銀行はその国の金融システムの中核を担う金融機関で、その主な役割は、銀行券の発行、政策金利及び通貨供給量のコントロールにより経済の健全な発展を支える事です。日本では日本銀行(日銀、BOJ)、EUではECBがこれに相当します。
FRBの仕事は?
FRBはアメリカドルを発行するだけの機関ではありません。通貨の発行量で物価は変化し、我々の生活に大きな影響を与えます。その事からFRBは、物価の安定と経済の活性化を使命として運営されています。
具体的な仕事として、
- 年間インフレ率2.0%の達成及び維持
- 雇用の最大安定化
が掲げられています。
上記の仕事を達成する為にFRBは年に8回基本会合を開き、金融政策を決定し、経済の良好な成長を継続させることを目指します。また、コロナショックの様な突然の社会問題が発生した時には、緊急会合が開かれ、早急な経済立て直しを図ります。
金融政策の重要性
金融政策とは、中央銀行が政策金利(アメリカの場合はFF金利の誘導目標)の決定や公開市場操作などを通じて、通貨や金融の調整を行う事です。
金融政策が主に国民の生活に影響するのは、
- 物価変動 (インフレ)
- 金利の変動
- 雇用などの景気
です。
1.物価変動
2022年からアメリカを始め、日本も物価高に悩まされています。その要因は、FRBや各中央銀行が新型コロナウイルス対策として行った量的金融緩和政策によるものです。端的に言えば、通貨を沢山発行した結果、紙幣の価値が下がり、物価高に繋がりました。この様にFRBが通貨の流通を増やし過ぎるとインフレが引き起こされ、減らし過ぎるとデフレ(物価安)が起こりやすくなります。
図1:アメリカの通貨供給量(M2)変化
(引用:https://fred.stlouisfed.org/series/M2SL)
2020年以降、通貨供給量が急激に増加している事が分かります。
この結果が、インフレの一因となっています。
2.金利の変動
FRBはFederal Funds Rate(FFレート)の誘導目標を決定します。銀行間の貸出金利であるFF金利はマーケットで決定されますが、FEDは様々な手段を用いて金利水準をコントロールします。FFレートの誘導目標変更の影響が波及しマーケット長期金利が変動すると、それに伴って住宅ローン金利も変動します。
図2:アメリカの30年住宅金利変化
(引用:https://fred.stlouisfed.org/series/MORTGAGE30US)
FRBは、2020年3月に政策金利を0.00~0.25%に低下させ、2022年3月から政策金利を連続的に上昇させ、現在は5.25~5.50%に設定しています。
この影響で30年住宅金利は2020年12月に2.66%を底値に、2023年10月には7.49%と大幅に上昇しています。
この影響について下記の条件で分かりやすく比較してみます。
- 3000万円を30年ローンで借り入れ、2.66%と7.49%の金利で総返済額を計算する。
- 金利2.66%:4,358万円 (月々返済額:12.2万円)
- 金利7.49%:7,545万円 (月々返済額:21,0万円)
7.49%の金利の場合、毎月均等に返済し続けると元本の2倍以上の返済が必要で、2.66%と比較して約3200万円差が出ます。
他にも自動車ローン、クレジットカードローン、銀行貸付などにも同様の影響が出てきます。
良い点としては、定期預金利息も同じく上昇する事が挙げられます。
3.雇用などの景気
景気見通しによって企業は採用や新規投資を決定します。景気の見通しが明るい場合、企業は売上げの増加を見込み、雇用や設備投資を拡大します。しかし、金利上昇により借り入れコストが上昇すると、住宅や車などローン商品の売れ行きが減少するなど、景気が悪化し雇用が減速する事が予想されます。
図3:アメリカ非農業部門の求人数変化
(引用:https://fred.stlouisfed.org/series/JTSJOL)
2020年前半のコロナ危機以降は、FRBの金融緩和により雇用が急激に回復、コロナ危機以前の水準を大幅に上回り過熱気味(人出不足)な状況となりました。その後FRBが段階的に政策金利を引き上げたことにより、雇用は落ち着きを取り戻しつつあります。
これらの様に、FRBの金融政策は企業活動や国民の生活に大きく影響を及ぼします。
金融政策の発表
FRBの動向について決定及び公表されるイベントがあります。Federal Open Market Committee(FOMC)と呼ばれる年8回開催される会合です。アメリカの現状や社会問題から経済見通しについて主要メンバーが2日間議論を行い、投票権を持つメンバーの投票によって金融政策が決定されます。2日目及び後日、内容の開示や記者会見が行われ、世界中に発信されます。
内容及び発表時間(アメリカ東海岸時間基準)は、
- 2時:概要の公表/(経済見通しの詳細予測)
- 2時30分:FRB議長の記者会見
- 3週間後(2時):FOMC議事録開示
と進行します。
最近の注目点は、
- FF金利の誘導目標の決定
- FRBの金融政策の方針
- 債券買い入れプログラムの見直し
- FRBメンバーの景気見通し
などが挙げられます。
表1:9月FOMC FRBメンバー経済見通し一覧
(引用:https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20230920.pdf)
経済見通しは3か月に一度(2回に1回)発表され、FRBメンバーの経済観測が分かります。
この表には、GDP/失業率/インフレ率(PCE)/政策金利の年末変化予想が記載されています。
図4:FRB政策金利の変化
(引用:https://fred.stlouisfed.org/series/DFF)
政策目標金利水準は、2022年3月に0.00~0.25%から0.25~0.50%に引き上げられ、2023年10月現在は5.25~5.50%です。
FRBが世界に注目される理由
アメリカは世界第一位の経済大国であり、世界の基軸通貨を発行するFRBは世界経済の中心になっています。FRBが政策金利を上げれば、アメリカの金利が変動し、経済全体が変化します。グローバル社会と呼ばれる現代において、貿易や国境を超える人の行き来は経済活性化に欠かせないものです。大型顧客であるアメリカの経済減速は世界の経済減速に繋がりますので動向には注目が集まります。
FRBの発信は、投資家やアメリカ国民だけに必要な情報ではなく、我々の生活にも影響があります。
この機会にFRBの動向についてチェックしてみてください。
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